教えて!よしかた先生

最近の生理事情編

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1.フェムテックとは何ですか?

女性の健康の課題をテクノロジーで解決する製品やサービスのことで、「female technology」の略語です。
新しい分野のように感じるワードですが、皆さんがよく耳にする、「避妊用ピル」は、実はこのフェムテックの元祖だったといえます。
女性の健康、とくにセクシュアリティに関することは、社会的な背景が強い影響を与えるので、時代によって、地域によってとらえ方が異なり、今まで日本ではどちらかといえば消極的なムードでした。
 

しかし、「フェムテック」というステキな言葉の登場で、女性が健康的なセクシュアリティを守るためのツールとして、若年層を中心に急速に広まっています。
「吸水ショーツ」や「月経カップ」「布ナプキン」など、月経日を気持ちよく過ごすためのグッズ、デリケートゾーンをスキンケアする専用のクリームや、骨盤底から膣の筋肉を鍛えるためのグッズなどが、カラフルで可愛いデザインの商品として販売されていて、私としては『とても良い時代になったなぁ』とうれしく思っております。
 

グッズだけでなく、昔「避妊用ピル」と言われていたホルモン剤は、今は月経をコントロールする保険適用の治療薬「LEP(Low dose Estrogen Progestin Combination)製剤」として認識されるようになっています。
このLEP製剤という名前は日本独自のもの。皆さんご存じでしたか?避妊用低用量ピルと認識を区別するために作られた言葉ですが、良いイメージですよね。
月経痛や月経の量が多い過多月経でクリニックにいらっしゃる中高生の患者様に、LEP製剤をお勧めすると、以前は付き添いのお母さまから「ホルモン剤なんて!そんな、いかがわしい薬は嫌です」などと言われていましたが、5~6年前くらいからはLEP製剤について既にご存じで、積極的に服用を検討してくださるようになってきたなと感じております。 これも、いわゆる医療フェムテックです。

善方先生

デジタルネイティブの皆さんに、ぜひお勧めしたいフェムテックは基礎体温の自動ファイリングです。
婦人体温計のデータをスマホに飛ばせるタイプを購入すれば、朝、起きる前にちょっと口にくわえて測るだけで、勝手に基礎体温表を作ってくれます。
中には、自分の月経周期に合わせた健康上の注意などを教えてくれるアプリもあり、「今は月経前だからむくみやイライラがあるのね…。できれば排卵前に仕事(勉強)を集中してやっちゃおう」など、行動計画にも役立つかもしれません。

フェムテックは「女性が積極的に自分でセクシュアリティと健康を考える」ためにとても重要なテクノロジーなのです。

2.生理用品を選ぶ時のポイントはありますか?

生理用品といえばまず「生理用ナプキン」ですが、昼用、夜用、少ない日用など生理の量や、過ごし方によって使い分けるというのが基本ですね。
できるだけ肌に優しい素材のものを選んだほうがよいでしょう。
 

肌に優しいという点で「布ナプキン」はお勧め。
布だと漏れてしまうのでは?と心配になるかもしれませんが、肌に触れる側と下着側で素材が違い、しっかり吸収してくれます。
一般の紙ナプキンと同じくらいの枚数を取り換えれば、問題ありません。何度も洗って使えるので、初めに揃える時は高価でも結局は経済的。
紙ナプキンで皮膚がかぶれてしまう方にはぜひお試しいただきたいです。
 

経血量が多い、仕事でなかなかナプキンを交換する時間を取れない、といった場合は「月経カップ」や「タンポン」という選択肢があります。
月経カップとは、釣り鐘のような形の柔らかいカップで、膣の中に装着して月経血をカップに貯めて、4~6時間ごとに取り出して洗浄し、再び装着するもの。
タンポンは吸収力の強い棒状の綿の塊を膣の中に装着し、付いているヒモを引いて取り出し捨てるというもの。
どちらも、皮膚まで経血が下りてくるということがないので、ムレやかぶれが起こらないという利点があります。
しかし、自分で膣の中に装着しなければならないので、慣れないと、痛みを伴い、時間がかかってしまうなど、使い方が難しいところが欠点でしょう。
大変まれではありますが、トキシックショックというブドウ球菌による劇症型の感染症を起こしてしまうリスクがあり、装着時間や膣に出し入れする際の衛生面には注意が必要です。
 

「吸水ショーツ」という画期的な生理用品が登場し、フェムテック業界を盛り上げてくれています。
ショーツ自体が高い吸水性をもつので、ただ履いているだけという気楽さがよい点です。
ただ、ほとんどのメーカーで、経血量の多い日は、吸水ショーツとほかの生理用品を併用することを勧めていて、漏れてしまう心配は否めません。
でも、月経がいつ始まるかわからず、ずっとおりものシートをつけている様な場合や、初経から間もない時期で月経周期が不安定な時などにはぴったりです。
ジュニアサイズのラインナップや、量販店での販売など、とても手に入りやすいので、きっと一般的な商品になるであろうと思われます。
 

最近のフェムテックという概念の盛り上がりやネットでの購入が一般的になった時代において、自分に合った生理用品を選択できることは、とても素晴らしいことだと思います。

吸水ショーツ

3.「生理休暇」を周囲に理解してもらうにはどうすればいいですか?

周囲のよき理解を得るには、いろいろな要因が絡んでくると思います。
職場の規定、ムード、人間関係といった外的環境要因。
仕事への思い入れ、自分のキャリア形成の時期、職場での役割、立ち位置など内的要因。
これらの状態が良好に組み合わされば、「生理休暇」を堂々と取得できるのだと思います。
 

まずは、職場の規定がどうなっているのかを確かめましょう。そのうえで、自分のことを信頼してくれている上司に直接相談してみるのが得策。
つまり、ひとりよがりにならない様に、日ごろから職場での良い関係を作ることが大切だと思います。
 

そして、月経痛や月経量の多い過多月経に悩んでいるなら、ぜひ婦人科を受診してください。
鎮痛剤だけではなく、「LEP(Low dose Estrogen Progestin Combination)製剤」などを使い、女性ホルモンを自分でコントロールすることで、つらい月経痛から解放される方が多くいらっしゃいます。
また、月経痛の原因が、子宮内膜症や子宮筋腫などの病気からくることもあり、婦人科検診をすることで疾患が見つかれば、早いうちに治療を始められ、悪化を防ぎ、改善させることも可能です。
 

「生理休暇」は当然の権利ですが、それと同時にセルフケアするための方法を探していくことも大事ですね。

4.男性にも、生理についてわかってほしいのですが、どのような説明をすればよいでしょうか。

「生理にまつわる辛いこと」をどうわかってもらうのか?生理(月経)のない男性に、この案件を他人事にせず、ぜひ理解してほしいですよね。
ただ、どうやって伝えたら良いのかという点で、ひと工夫がいるかもしれません。
 

昔と違い、最近の若者の間ではオープンにセクシュアリティについて語ることができるようになっていると感じています。
しかし、男性のパートナーとの会話の中で自分(女性)の月経について触れることに抵抗がある方は、「風邪をひいてのどが痛い」と同じ感覚で「もうすぐ生理だからイライラしちゃう」とスッと言えるように頑張ってみてください。
医療者から見れば、この二つの困ったことは全く同じ感覚。普段から何度も言っていれば、力まずに話せるはずです。
 

そして、職場の男性陣にわかってもらうには、「月経と仕事のパフォーマンス低下」といったテーマについて、職場でセミナー開催や対策会議をして、勉強型の伝え方をしてみてはいかがでしょうか。
NPO法人日本医療政策機構による「働く女性の健康増進調査(2018)」(※)において、月経前症候群(PMS)を経験したことがある女性は70%と多く、月経中に仕事のパフォーマンスが半分以下になるという女性は45%、約半数もいました。
つまり、職場としてはパフォーマンス低下の原因となる月経を、見過ごすことはできませんし、しっかり対策をすべき案件なのです。
 

場当たり的に、「生理だから辛いのに、なぜわかってくれないのですか」という主張のみでは、なかなか上手くいかないので、具体的に月経の仕組みについて知ってもらうことから始めましょう。
職場の産業医の先生や、近隣の産婦人科医にセミナー講師を依頼する、資料を作成し勉強会を開いてみるなど、積極的にプランを練ってみてはどうでしょうか。
ぜひ、その勉強会運営チームに男性も引き込んでくださいね。
 

生理(月経)のことは女性の健康を守るために知っておいてほしい必須の知識。恥ずかしいことでも、隠すべきことでもなく、ヘルスケアの一環として考えて、男女ともに理解を深めてほしいです。

打ち合わせ

※出典:特定非営利活動法人 日本医療政策機構
働く女性の健康増進調査(2018)(別ウィンドウで開く)

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