教えて!よしかた先生
女性特有のがんを知ろう〜特徴・検診・予防〜
女性特有のがんには、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん、乳がんがあげられます。乳がんと子宮体がん、卵巣がんは罹患率が増加傾向にあります。一方で子宮頸がんは若年層(20代〜40代)で増加しており、社会的な問題となっています。重要なことは、子宮頚がんは、HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンで予防できるということ。知っておいて欲しい重要な予防策です。また、乳がんは日本女性の9人にひとりが罹患する女性のがんで最も頻度の多いがんであり、晩婚、少産化によって子宮体がんも罹患率が高くなっていますが、どちらも初期に発見できれば完治できるといわれ、定期検診がとても大切です。
子宮頸がん
子宮頸がんは、子宮の入り口にできるがんで、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因となります。HPVは多くの場合自然に消えますが、感染が続くとがんに進行することがあります。初期は症状が出にくいため、定期的な検診が大切です。
| 主な初期症状と要因 |
不正出血、性交時出血 |
|---|---|
| 発症しやすい年齢 |
20~40代 |
| リスク要因 |
ヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染 |
| 検診が推奨されるタイミング |
検診には2つの方法があります。 |
検診は何歳まで受け続ければいいんだろう・・・?
日本の公的な指針では、検診を受ける年齢に上限は設けられていません。
- ただし、自治体が実施する検診(公費負担)の対象としては、「特に推奨される年齢」として69歳までとしている場合があります。
- 70歳以上になっても、子宮がある限りはリスクがゼロになるわけではないため、検診の継続についてはかかりつけの医師にご相談ください。
公費負担の子宮がん検診は自治体によって種類、頻度などが異なります。
子宮体がん
子宮体がんは、子宮の内側(子宮内膜)にできるがんです。40代後半から増え、閉経前後の女性に多くみられます。主な原因は女性ホルモン(エストロゲン)の影響が長く続くことで、初期症状として不正出血が現れることがあります。気になる出血があれば、早めに婦人科を受診することが大切です。
| 主な初期症状と要因 |
不正性器出血 |
|---|---|
| 発症しやすい年齢 |
40代後半から増加しはじめます。発症のピーク(好発年齢)は50代から60代で、閉経期前後にあたる女性に最も多く見られます。 |
| 主なリスク要因 |
エストロゲンが、子宮内膜に長期間にわたって刺激を与えることと関連しています。 |
| 検診時期 |
子宮頸がん検診とは異なり、子宮体がんについては、国が推奨する「症状のない人全員を対象とした定期検診(対策型検診)」はありません。 |
| 検診が推奨されるタイミング |
1.不正出血や以下の様な自覚症状がある場合(これが最も重要です)。 |
検診の目安ってあるのかな?
- 症状がある場合は、年齢に関わらずすぐに婦人科を受診してください。
- 症状がなくても、40歳を過ぎた場合や、閉経を迎えた場合は、婦人科で子宮頸がん検診を受ける際などに、子宮体がん検診についても医師に相談してみることをお勧めします。
- 検査は、子宮の奥(体部)の細胞を採取する「子宮内膜細胞診」や、超音波(エコー)検査で子宮内膜の厚さを調べる方法などがあります。
乳がん
乳がんは、乳房にできるがんで、初期には痛みのない「しこり」に気づくことが多いのが特徴です。30代後半から増え、40代後半と60代に多くみられます。早期に見つければ治りやすいため、定期的な検診と月1回のセルフチェックが大切です。
| 主な初期症状と要因 |
自分で気づくことができる一番多い初期症状は“しこり”です。 |
|---|---|
| 発症しやすい年齢 |
乳がんの罹患率は30代後半から増加し始めます。発症のピーク(好発年齢)は、40代後半と60代の2つの山があります。 |
| 主なリスク要因 |
乳がんの発生には、エストロゲンが深く関わっているとされています。 |
| 検診時期 |
A. 公的検診(対策型検診) |
卵巣がん
卵巣がんは、卵巣にできるがんで、初期には自覚症状がほとんどないことが特徴です。40代以降に増え、50~60代に多くみられます。お腹の張りや違和感など、はっきりしない症状が続くことがあるため、気になる変化があれば早めに婦人科を受診することが大切です。
| 主な初期症状 |
卵巣がんは初期症状がほとんどないことが特徴です。症状が出たとしても非常に曖昧で、見過ごされやすいため注意が必要です。 |
|---|---|
| 発症しやすい年齢 |
罹患率は40代から増加し始めます。発症のピーク(好発年齢)は50代前半から60代です。(※ただし、まれに「胚細胞性腫瘍」など、10代~20代の若い世代に発生するタイプの卵巣がんもあります。) |
| 主なリスク要因 |
卵巣がんのリスク要因は、まだ完全には解明されていませんが、主に以下の点が指摘されています。 |
| 検診時期 |
子宮頸がん検診や乳がん検診(マンモグラフィ)のように、「症状のない一般の人を対象とした、有効性が確立された(死亡率を減少させると証明された)検診方法」は、現在のところ卵巣がんにはありません。 |
どうして卵巣がんは検診がないんだろう・・・?
腫瘍マーカー(CA-125など)や経腟超音波(エコー)検査はありますが、これらを単独で検診として行うと、がんではないのに「陽性」と出てしまう(偽陽性)ことが多かったり、早期がんを発見しにくかったりするため、集団検診としては推奨されていません。
検診がないのは不安だな・・・。
じゃあ、どうしたらいいんだろう?
- 自覚症状に注意する: 上記のような「お腹の張り」などの症状が続く場合は、すぐに婦人科を受診してください。
- 婦人科の定期受診: 症状がなくても、子宮頸がん検診や他の目的で婦人科を受診する際に、一緒に経腟超音波(エコー)検査や内診を受けることが、卵巣や子宮の異常を早期に発見する最も現実的な方法です。
- ハイリスク群の管理: 上記のリスク要因(特にBRCA遺伝子変異や強い家族歴)がある方は、検診の対象ではなく、サーベイランス(厳重な経過観察)の対象となります。主治医と相談し、定期的な経腟超音波検査や腫瘍マーカー検査を受けることが推奨されます。
検診で「要精密検査」と言われたら
検診を受けたら「要精密検査」って言われたけど、
私は「がん」ってことですか・・・?
精密検査とは
がん検診における「精密検査」とは、最初のがん検診(一次検診)で「異常の疑いがある(要精密検査)」と判定された場合に、それが本当にがんなのか、がんでないのかを確定させるために行う、より詳細な検査のことです。「二次検診」と呼ばれることもあります。
精密検査を受けるように言われると、誰もが「自分はがんなのではないか」と強い不安を感じます。しかし、「要精密検査」=「がん」ではありません。実際には、精密検査を受けた人のうち、本当にがんと診断されるのはごく一部です。一次検診は、がんを見逃さないように、少しでも怪しいものを「要精密検査」として拾い上げるように設定されています。
「要精密検査」=「がん」ではありませんが、それでも不安に感じる方もいらっしゃると思います。
お電話でもご相談できますので、お気軽にお電話ください。
電話での相談先
神奈川県のがんの相談に関するページ(健康医療局 保健医療部がん・疾病対策課)
女性特有のがんのリスクを下げる日常生活のポイント
がんのリスクを下げるような食生活
食生活は、特に女性ホルモン(エストロゲン)と関連が深い乳がんや子宮体がんのリスクと強く関係しています。
- 閉経後は、脂肪組織がエストロゲンの主な供給源となります。
- 肥満は、体内のエストロゲンレベルを高くするため、乳がんや子宮体がんの明確なリスク要因となります。
- バランスの取れた食事と適度な運動で、太りすぎないことが非常に重要です。
2)アルコール(飲酒)を控える
- 乳がんに関して、アルコールは「確実な」リスク要因とされています。
- 飲む量が多いほどリスクは高まります。摂取は最小限に留めるか、禁酒することが推奨されます。
3)野菜や果物を積極的に摂る
- 野菜や果物に含まれるビタミン、ミネラル、食物繊維、抗酸化物質などが、総合的にがんの予防に働くと考えられています。
4)動物性脂肪を控えめにする
- 飽和脂肪酸(肉の脂身やバターなど)の過剰な摂取は、肥満につながりやすく、乳がんや子宮体がんのリスクを高める可能性が指摘されています。
- 魚や植物性の油(オリーブオイルなど)をバランス良く取り入れることが勧められます。
性生活
性生活は、主に子宮頸がんのリスクと直結しています。
- これが子宮頸がん予防において最も効果的な手段の一つです。
- 子宮頸がんのほぼ100%がHPVの持続感染が原因です。
- 性交渉開始前にワクチンを接種することが最も効果的ですが、性交渉経験後であっても、まだ感染していない型のHPVに対する予防効果が期待できます。
2)コンドームの使用
- HPVは性器周辺の皮膚の接触でも感染するため、コンドームで感染を100%防ぐことはできませんが、性器が直接接触する範囲を減らすことで、HPVや他の性感染症(クラミジアなど、子宮頸がん化の促進要因とされるもの)の感染リスクを低減させる効果は期待できます。
3)特定のパートナー
- 性的パートナーの数が多いほど、HPVに感染する機会は増加します。
禁煙・受動喫煙回避
喫煙は、多くのがんの強力なリスク要因であり、女性特有のがんも例外ではありません。
- 喫煙は、子宮頸がんの確実なリスク要因です。
- タバコの化学物質が子宮頸部の細胞に直接ダメージを与えるだけでなく、HPVを排除する局所の免疫力を低下させます。
- 喫煙者は非喫煙者に比べて、がん(または前がん病変)に進行するリスクが高くなります。
2)乳がんとの関連
- 喫煙は、乳がんのリスクを高めることが「ほぼ確実」とされています。
3)受動喫煙の回避
- 自分が吸わなくても、他人のタバコの煙(副流煙)を吸う受動喫煙も、同様に子宮頸がんや乳がんのリスクを高めることが指摘されています。
- 家庭内や職場など、身近な環境での受動喫煙を避けることも非常に重要です。
適切な飲酒量
世界保健機関(WHO)は、「がん予防の観点から、アルコールに安全な量は存在しない」としており、予防のためには禁酒が最も有効であると明記しています。
乳がんとの関係
- アルコールは、乳がんの確実なリスク要因です。
- 閉経前の日本人女性を対象とした研究では、アルコールの摂取量が1週間あたり純アルコール換算で23g(例:ビール中瓶1本、ワイングラス2杯程度)を超えるだけでも、乳がんのリスクが1.7倍以上に上昇するという報告があります。
- アルコールが体内で分解されてできる「アセトアルデヒド」に発がん性があるほか、アルコールが女性ホルモン(エストロゲン)の濃度を高めることが、乳がんのリスクを上げると考えられています。
運動
適度な運動は、乳がんや子宮体がんのリスクを下げることが科学的に示されています。
1)乳がん
- 運動(特に閉経後の女性)は、乳がんのリスクを低減させることが「ほぼ確実」とされています。
- 運動によって体脂肪が減少し、エストロゲンの過剰な分泌が抑えられることや、免疫機能が向上することが理由と考えられています。
2)子宮体がん
- 子宮体がんの大きなリスク要因である「肥満」を防ぐために、運動は非常に重要です。
3)推奨される運動の目安
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、以下が推奨されています。
- 身体活動: 歩行またはそれと同等(早歩き、家事など)の活動を毎日60分(約8,000歩が目安)。
- 運動: それに加えて、息が弾み汗をかく程度の運動(ジョギング、水泳、活発なスポーツなど)を毎週60分。
まずは「今より10分多く体を動かす」ことから始めるだけでも効果があります!
ストレスなど
ストレスとがんの関連については、まだ研究途上の部分もありますが、以下のように考えられています。
1)直接的な関連は不明確
- 「ストレスが直接的にがん細胞を作る」という明確な科学的証拠は、現時点では確立されていません。
2)間接的なリスク要因
- ストレスは、がんのリスクを高める行動につながりやすくなります。
3)がんの進行への影響(悪化要因)
近年の研究では、ストレスが免疫機能(がん細胞を攻撃するNK細胞など)の働きを低下させることが指摘されています(子宮頸がんの進行など)。
Erica K. Sloan, et.al. Cancer Research, 2010 Sep 15; 70(18): 7042–52
また、慢性的なストレスが交感神経を過剰に刺激し、乳がんの増殖や転移を促進する可能性があるという研究報告もあります。
M. D. G. de Jong, et.al. Psychosomatic Medicine, 2008 Jul; 70(6): 658–665
ストレス自体が発がんの引き金になるかは別として、ストレスはがんの進行を早めたり、がん予防に悪い生活習慣(飲酒・肥満)を招いたりする可能性があります。趣味の時間を持つ、十分な睡眠をとる、適度な運動(運動自体に優れたストレス解消効果があります)をするなど、自分なりのストレスコントロール方法を見つけることが重要です。
HPVワクチンのご案内(健康医療局 保健医療部健康危機・感染症対策課)
女性の皆さんへ
2人に1人が罹患する「がん」。女性特有のがんについて、しっかり定期的に検診することで早期発見、早期治療につながり、治すことができます。また、日頃から1日10分でも多く身体を動かすこと、十分な睡眠、バランスの良い食生活が健康的な生活を向上させます。
不正性器出血や乳房のしこりなどの症状がある場合は、放置せず、なるべく早く医療機関を受診しましょう。「知ること」「受診する勇気」が命を守る第一歩であることをよく心得ていただきたいと思います。
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