教えて!よしかた先生
BMIを知って健康的なカラダづくり
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シンデレラ体重、美容体重、標準体重…。体重についてはいろいろな”基準”を目にします。
よしかた産婦人科院長であり、女性のヘルスケアの専門家である善方裕美先生に、体格の指標となるBMIや健康的な痩せ方について伺いました。
BMIってなに?
BMIとはbody mass index(ボディ・マス・インデックス)の略で、体格の指標となる数値のこと。BMIは身長に対する体重の割合を表していて、食事や運動などのヘルスケアの方法はBMIに応じて変わります。同じ体重でも、背の低い人は「肥満」、背の高い人は「痩せ」に入ることもあり、健康の指標となる体格は、身長を考慮する必要があるのです。「ヘルシーな食事とは低糖質、低カロリー?」よく聞くフレーズだと思いますが、もしかすると、それはあなたにとっては間違っているかもしれません。
ちなみに、BMIは18歳以上に使用し、生後3か月~5歳までの乳幼児にはカウプ指数、6歳~18歳にはローレル指数を用います。
BMIと適正体重
BMIは体重(kg) ÷ 身長(m)2 で計算します。この値によって、健康的な適正体重なのかどうかがわかります。BMIが18.5以上25未満を適正体重としており、そのちょうど真ん中のBMI 22は、最も病気になりにくい健康体重であることがわかっています。そして、BMI18.5未満のやせ、25以上の肥満ではそれぞれ健康被害のリスクが高くなります。日本産科婦人科学会では以下の様なリスクがあることを認知してもらえるよう広報しています。
このようなリスクがあるにもかかわらず、残念なことに若い世代の女性の“やせ”が増加しているといわれています。BMI 18 を「シンデレラ体重」と呼び、これを目指してダイエットを勧めるような情報もみられますが、これは健康に良くないことなのだとぜひ知っていただきたいです。将来、妊娠出産する場合、妊娠前からのママの“やせ”が、おなかの赤ちゃんに悪影響を及ぼす可能性があるのです。
また、厚生労働省の食事摂取基準のなかでは、適正体重の下限を年代ごとに変えて推奨しています。これは、50歳代から筋力が低下しはじめ、転倒しやすくなり骨折リスクが上がるため、筋力を落とさないことが健康目標になってくるからです。健康な状態と要介護状態の中間の段階のことを『フレイル』といいます。フレイル予防のためには、50代から筋力維持の運動習慣をつけること、たんぱく質、カルシウム、ビタミンDを中心とした十分な栄養摂取が大切です。
若年層の“やせ”すぎ問題
厚生労働省がおこなっている令和5年の「国民健康・栄養調査」によると、全女性の“やせ”の割合は12.0 %で、そのうち20~30歳代の “やせ”は20.2 %と若い女性が多くの割合を占めており、過去10年の中でも一番高い割合でした。
‟やせ過ぎ”は、様々な健康被害をもたらすことがわかっています。摂取カロリーが少ないと、貧血、筋力の低下につながり、そのせいで疲れやすい、だるいなどの倦怠感に悩まされ、学業や仕事に支障が及ぶこともあります。また、栄養摂取不足は、卵巣機能を低下させ、月経不順や不妊症の原因になります。ホルモンバランスが乱れると、肌あれ、クマやくすみなどの肌トラブルをひきおこします。また、本来なら20代後半で最大骨量を獲得できるはずなのに、卵巣機能低下と栄養不足が原因で骨密度が上昇できず、若いのに骨粗しょう症になってしまいます。また、妊娠した後、お腹が張りやすく赤ちゃんが早い時期に生まれそうになってしまう切迫早産、生まれた赤ちゃんの体重が少ない低出生体重児(小さく生まれると、将来に赤ちゃんが成人した時、高血圧・糖尿病などの生活習慣病になりやすくなる)というリスクが高くなります。このように、“やせ過ぎ”の健康被害は意外にもたくさんあるのです。
若年女性のカロリー摂取不足による“やせ過ぎ”は、「ボディイメージのゆがみ」が原因の一つとされています。1996年の「国民健康・栄養調査」では20歳代の10人に1人がダイエットをしており、そのうちの60%は普通体型、15%はやせ型であり、本来ならダイエットの必要がない女性が摂取カロリーを制限していたという実態が報告されています。SNSを見ている時間が長いほどやせ傾向が強いという調査結果もあり、様々なツールを通して、「痩せていることは美しいこと」という一方的な情報を受け入れてしまっていると考えられます。
20~30歳代は女性ホルモンが一生の中で最も多く分泌される時期。女性ホルモンと適切な栄養摂取、適度な運動によって、肌はみずみずしく、筋肉は充実して、柔らかく張りのある身体のラインで、まさに「健康美」を作り出すことができる年代です。これに対して、“やせ過ぎ”は、若い身体が本来持っている輝きと美しさを損ない不健康を導いてしまいます。まずは、以下のページからあなたの今のBMIを計算していただき、健康美について見直してほしいと思います。
・あなたのBMIはいくつ?BMI計算ツール
健康的な痩せ方って?
第一に、18~49歳ならBMIが18.5以上25未満、50~69歳は20以上25未満、70歳~は21.5以上25未満の適正体重を目指すことが基本。この範囲にいるなら、筋力維持の運動と、バランスの良い食事に心がけていればOKでしょう。BMI25以上の場合、摂取カロリーよりも消費カロリーが多くなるように自分のライフスタイルに合わせて考えます。20~30歳代では、できるだけカロリー消費量の多くなるような強度の高い運動をして、食事は栄養素をまんべんなく摂り、デザート、ジュースなどの副食を減らす工夫をします。40~50歳代は閉経前後で基礎代謝が落ち、体重が増加しやすい時期。タンパク質をしっかり摂りつつ、炭水化物を減らし、運動習慣をつけて下半身の筋力アップを目指します。また、エストロゲンが減少し、骨量が急激に減ってくるので、カルシウム(1日700㎎)、ビタミンD(1日1000単位)、ビタミンK(1日150μg)を意識してしっかり摂るようにしましょう。「今までと同じ食事なのに太ってしまう…。」という方が多いこの年代の女性にとって、栄養に気をつけながら体重を減らすのはとても大変ですが、食事の内容を吟味して、1週間に3日以上できる運動習慣をつけましょう。
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BMIで自分の体格を知ろう!
18歳以上からBMIで体格の評価ができます。実は、自分で思っているより“やせ過ぎ”かもしれませんので、まず、計算してみましょう。身長が158㎝だとすると、最も病気になりにくいBMI 22 は体重55kg、やせ過ぎのBMI18.5は46㎏です。
食事は身体の活力の源。気力、体力もまずはしっかり食事を摂ることから作られます。おうちごはんで調理を楽しむ、外ごはんで楽しく過ごす、どちらもとても良い時間です。むずかしく考えないで、美味しく楽しくたっぷり食べましょうね。
・あなたのBMIはいくつ?BMI計算ツール